和名: クロホシマンジュウダイ
学名: Scatophagus argus
英名: Spotted Scat
マレー: Ikan Kitang
面白い名前ですね。村では普通に獲れる魚です。マングローブなどの汽水域周辺に生息しています。熱帯から亜熱帯に生息している魚で、日本だと沖縄や西日本の一部にもいるようです。
第一背鰭、腹鰭、尻鰭前縁部の棘条が毒針になっているので、取り扱いは少し注意が必要です。クロホシマンジュウダイは独立した科に分類されているのですが、体形も毒棘の位置もアイゴ(アイゴ科)に似ていますね。刺毒の感想は人によってまちまち。これが一番痛い(エイは除く)という漁師もいれば一番痛くないという人もいます。刺される毒棘によって痛さが違うという人も。刺されないのが一番ですね。
群れで行動しているため、丁度いい位置に投網が入ると大量に獲れたりします。これが小さいクロホシマンジュウダイの群れだったりすると網から外すのが大変で結構厄介です。掴んでしまえば棘を開いてじっとする魚なのであまり危なくはないのですが、小さい個体は網に絡んだり見えづらかったり、ごみや他の魚に隠れて見えなかったりします。投網で本種とオティック(ハマギギ科の魚)の稚魚に刺されるのは日常茶飯事です。
本種は堆積した有機物を食べる魚で、学名のスキャットファーガスの通りうんこも食べます。群れで川底の堆積物を食べる時に独特な小さな気泡が出るので、それをサインに投網を投げると獲りやすいです。
刺し網の場合は体高が高い魚なので4~5インチ目の網で狙います。第一背鰭先頭の棘条の生え際が前面に向かって水平に出ているので、この部分が引っ掛かっていることが多いです。ボラ等と同様後進が苦手なので、軽く引っかかっただけでも外せなくなるようです。
危険を察知するとピューンと直線的に力強く泳ぐので、釣りだと引き味がとても良いです。釣りの場合は小さめの針に練り餌やご飯粒で狙います。
雨が少ない時期は川の流れが滞り村周辺は塩分濃度の濃い汽水になり、酸素量が少なくなります。そうなると村周辺で獲れる魚が少なくなるのですが、この魚はそんな時期でも簡単に獲れてくれるので食料という意味ではありがたい魚です。バケツの中でも結構長く耐えるので、低酸素に強いのでしょう。
が、この魚、堆積物を食べる食性のせいか、川の流れが滞るこの時期はアオコのような臭み(アユのように上品なものではなく)が出るのです。ボラなんかもそうなのですが、この臭みが中々厄介。おかずの種類が限られる時期なので、できる限り丁寧に処理して、匂いの気にならない料理で対処するしかありません。最善は塩干でしょうか…
マングローブ域の魚なので、市場ではなかなか見ないです。近くの農園では悪くない値段で買ってくれたりします。
基本的には美味な魚で、調理法は割と何でもいけます。ただ、大きくなると厚い皮がゴムのように固いので、それが気にならない食べ方がおすすめです。湯通しすると皮も美味しく食べれます。僕は中サイズは塩焼き、大きいものはスープが好きです。
ネットで調べると刺身も紹介されていますが、僕はまだ試したことがないです。結構淡水まで入りますし、捨てた残飯とか人間やゾウのうんこも食べているので、ちょっと気乗りしないのです。