前回に続いて
こちらがホームステイの台所。

ここの人たちにとって製材はお手の物。柱も板もほぼチェーンソーと鉋、鑿だけで作っていきます。いつでも修復できる分結構適当な造りです。
屋根の下も床下も結構隙間が空いていて風通しは良好。リスやネズミ、色々な虫、時にはヘビが入ってきますが、慣れれば生活の一部なのであまり気になりません。(カニクイザルやシベットは言えの中を荒らすので気になりますが)
家の中の同居人である生き物達もまた、オオムカデを頂点に生態系を形作ります。
吊ってあるのは生活の糧である漁に使う投網。タンスの下にあるピンクの食器はクンドゥリ等人が集まる時に使うお菓子入れ。

奥に見えるのは沐浴部屋とトイレ。猫はネズミ狩りをしてくれる大切な家族です。
右の桶は重しがしてあるので食べ物が入ってますね。
緑色の果物はPedada。

Pedada (Sonneratia caseolaris)は川沿いに生えるマングローブの一種で、和名はナンヨウマヤプシキ。鹿児島や沖縄に生えるハマザクロ(マヤプシキ)の仲間です。
熟れると独特のいい香りがあり、酸味料として焼き魚や焼きエビに使うととても美味しい果実。酸っぱいですが生食もいけます。爽やかな香りと共に口中にぱっと広がる強い酸味、ねっとりめの食感が暑さでばてている時やちょっと眠い時なんかには最高です。こちらの人は塩と唐辛子で食べたりもします。
また、Ikan Patin(パンガシウスの仲間のナマズ)を狙って釣るには絶好の餌でもあります。
野生ではカニクイザルやシルバーリーフモンキー、レッドリーフモンキー等のサルの仲間や、パームシベット、三筋パームシベット、フルーツバット、リスの仲間等の果実食の哺乳類、コウライウグイスやオナガダルマインコ等の鳥がよく食べてます。
上の写真は初めて味見した時のもの。酸っぱい果物だなぁと思ったのを覚えています。当たり前になる前の新しい経験。何事にもそんな瞬間があるんですよね。

これはこの前載せた写真ですが、台所から撮ったもの。上を見てもらうと分かるのですが、この部分は屋根が伝統的なニッパヤシの葉で作られていました。トタンと違って涼しく、丁度風通しも良いこの場所はいつも誰かがお昼寝したりくつろいでいるような場所。
この空間を知ってしまうと、やはりトタン屋根の暑さは自然とはかけ離れて感じてしまいます。
五感が自然で包まれる空間。今の時代、そういう場所が暮らしの中にあることはとても貴重なことなのでしょう。
ヒトにとって当たり前だったことをようやく経験することができた瞬間。僕の人生の中ではとても大きな瞬間でした。